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武蔵野音楽学園

スライド・トランペット

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ケラー作 1850年頃 ロンドン 全長58cm

スライド・トランペットは、ピストンを持たないナチュラル・トランペットにスライド管をつけた楽器で、ルネサンス時代に登場した。通常はマウスピースのパイプ部分をスライドさせるが、イギリスでは、ベルの先のU字部分をスライドさせる方法が取られた。写真の楽器は、このタイプを参考に、19世紀に新たにイギリスで開発され、主にイギリス国内で演奏されたもので、「イングリッシュ・スライド・トランペット」とも呼ばれる。

この楽器は、U字管がトロンボーンとは逆方向、すなわち奏者の後方にスライドされる。奏者は左手で楽器を支え、右手の指でスライド管の取手を手前に引く。これにより全音分の音域が拡大され、ほぼ2オクターヴの半音階が演奏可能になる。奏者が手を離すと、ドラムに内蔵されたぜんまいが紐を巻き上げ、スライド管は元の位置に戻される。

当時、ヴァルヴ・トランペットの台頭にもかかわらず、イングリッシュ・スライド・トランペットは、19世紀を通してイギリス国内で圧倒的な人気を博した。そこには、名手ハーパー親子の功績が見逃せない。二人の演奏するスライド・トランペットは、澄んだ高貴な音色で聴く人を魅了したという。この楽器は軽快なパッセージの演奏には向かず、やがて姿を消したが、名演奏家の奏でたナチュラル・トランペット本来の自然な響きは、当時の人々にとって忘れ難いものとして心に残ったに違いない。(武蔵野音楽大学楽器博物館所蔵)