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武蔵野音楽学園

オルフィカ

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1920年頃 ウィーン 全長128cm

19世紀前半、いわゆるビーダーマイヤー時代のドイツやオーストリアでは、中産階級の人々に広く音楽が普及し、愛好家は気軽に楽器の演奏を楽しんだ。楽器はしばしば屋外にも持ち出され、行楽でのひと時に花を添えた。オルフィカはこのような時に使われた小型の携帯用ピアノで、1795年にウィーンのK.L.レーリッヒが考案した。この楽器はウィーン式アクションのハンマーを備え、弦を張るフレームが古代ギリシャの楽器リラに似て翼の形をしている。オルフィカの名称はこのリラの名手、オルフェウスに因んで付けられた。

テーブルや奏者の膝の上に載せて演奏され、主に歌の伴奏に使われたオルフィカであるが、興味深いことに、楽聖ベートーヴェンもこの楽器のために作品を残していたことが、近年判った。以前から「やさしいピアノソナタ」として知られ、ベートーヴェンが初恋の女性エレオノーレに贈ったWoO(ベートーヴェンの作品番号を持たない曲に付けられた整理番号)51番の二つの楽章からなる作品は、のちに彼女の夫となったヴェーゲラーの手紙により、オルフィカのために作曲されたものと判明した。さらに自筆譜の紙質や筆跡から、作曲された年代も当初と異なり、1796年から1798年の間であると指摘された。
 
オルフィカの洗練されたデザインは、優雅な貴婦人が奏でるのにまさにふさわしい。ボン郊外の美しい緑の中で、かつて心を寄せた女性がオルフィカを演奏する姿を思い浮かべながら、ベートーヴェンはこの愛らしい小品を作曲したのかもしれない。(武蔵野音楽大学楽器博物館所蔵)