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武蔵野音楽学園

ポジティーフ・オルガン

薗田 治子

辻オルガン製 日本 1966年 高さ222cm

ポジティーフ・オルガンの名称は、足鍵盤を持たない小型の据え置き型パイプオルガンに使われる。写真の楽器は、東京バッハ協会の故原田一郎氏が、「辻オルガン」社の創始者、故辻宏氏に製作を依頼した、わが国で戦後初の国産パイプオルガンである。

原田氏はバッハ研究に携わる中で、バッハ研究の大家であり、ノーベル平和賞受賞者としても名高いシュヴァイツァーの著書から、バッハのカンタータの独唱や小編成の楽曲の伴奏の楽器として、ポジティーフ・オルガンが不可欠であることを知った。シュヴァイツァーは、バッハ自身が聖トーマス教会の大パイプオルガンを解体し、独立した小型のオルガンを製作させた事実を取り上げ、バッハがカンタータの伴奏にはこのようなポジティーフ・オルガンを使用していたと主張している。

ポジティーフ・オルガンの購入を決意した原田氏は、外国製の楽器に頼るのではなく、この契機に日本国内で再びパイプオルガンの製作が始まることを願った。国産最古のパイプオルガンとしては、1932年に現在のヤマハ株式会社が製作した記録が残されている。しかし大戦により多くのオルガンが焼失するとともに、パイプオルガン製造の伝統も途絶えてしまっていた。そのような中で原田氏は、日本人の手によるこの楽器の継続的な製造ライン構築の必要性を痛感していたのである。

このオルガンには、限られた面積に効率よくパイプを配置し、前面の扉を閉めることで消音の効果を持たせるなど、日本の家屋での使用に配慮した設計がなされている。この楽器の温かく心に染み入る音色は、わが国のオルガン文化の発展を祈った先達の想いを今の私たちに伝えてくれる。(武蔵野音楽大学楽器博物館所蔵)