江古田生活とデビュー秘話
福井 要さんの歌声を初めて聴いたのは、実はスターダスト☆レビュー(以下スタ☆レビ)の楽曲ではなく、私が9歳の時に映画館でみた『がんばれ!!タブチくん!!(1979)』の主題歌だったということが後に分かり、ビックリしたんです。当時はクレージー・パーティーという架空バンド名義でしたので、「あの声は要さんだったんだ!」と。
根本 ちょうど僕が、ここ江古田の日芸(日本大学芸術学部)に通ってる時でした。既にコンテストに勝ったりしてあちこちで歌っていたのですが、ある日ライブ後に帰宅すると、音楽プロデューサーと称する方から「君、今日歌ってたバンドの子だよね?」と電話があったんです。でも、そのバンドではセカンドボーカルだったから「僕じゃない方では?」と答えたら、「背が低い方」と言われたので「それなら僕です」となって(笑) 。で、「映画やるんだけど、曲書いて歌ってみない?」と。
福井 “シンガーソング・コメディアン”の異名も持つ要さんらしい、隠れたデビュー作です(笑)。
根本 でも70年代の頃って、プロとしてしっかり活動出来ているロックバンドは、実は殆どいなかったんです。ですから僕自身もプロになる云々より、とにかく自分の好きな音楽をやれているなら、それで充分幸せだなと。まあ、家がお医者さんをやってたんで、僕一人ぐらいは養ってくれるだろうっていう甘い考えで(笑)。だから今思うと、デビューできたのは本当に“運”でしかなかった。僕は、学長のように音楽を専門的に学んできたわけじゃない。自分の心に響いた音楽を模倣して曲を作って、いつの間にかプロになっていたという感じです。

スターダスト☆レビュー初の日本武道館公演 ≪ONE NIGHT SOUVENIR HEY,COME ON!≫(1987年6月25日)
福井 日芸時代の江古田での思い出は?
根本 実は大学自体、行くつもりがなかったんです。でも親父や兄貴から「大学行ったら、地元(埼玉県行田市)では知り合えない全国からの友達が出来るぞ」って言われて。で、勉強してないから、入試科目が英語と国語だけの日芸を(笑)。
福井 放送学科ですよね?
根本 はい。あとは面接だけ。面接はちょっと自信があったんでね(笑)。
福井 トーク力の高さは当時から(笑)。
根本 無事入学後、新入生歓迎旅行のバスで、隣に僕と同じぐらいの身長の人が座ってて。当然同じ1年生だと思ってタメ口で話してたら、しばらく経ってその人が、空手部の主将で4年生だって言うんですよ。で、「あの、えー、主将は何で乗られたんですか」と。
福井 突然、いまさらの敬語(笑)。
根本 そしたら「面白そうだなと思ったから」って。
福井 訳わからない(笑)。
根本 で、後日、キャンパスで各部が勧誘している中、この方とたまたま目が合っちゃって「要ぇー!ここに住所を書け!」って。そこから僕は、空手部に…。
福井 運命の再会(笑)。
根本 とにかく音楽をやりながらでもと思ったけど、それを完全に超えてるわけですよ。で、毎日毎日「辞めさせてくれ」って言い続けたが、まあ許してくれない。とうとう8月になってしまい、これ以上いたら絶対抜けられなくなると思い、江古田の漫画喫茶で覚悟の話し合いを持ちました。「お前そんなに空手部がイヤか?」って3人の先輩方に囲まれて言われたので、「いや、イヤじゃないです。ただ僕は音楽をやりたいんだ」と。
福井 道場なら言えないですね(笑)。
根本 そしたら特にイカツい方が、スケッチブックに描かれた少女漫画を見せてくれたんです。僕が「えーと面白いですね。誰が描かれたんですか?」って訊いたら、その人が「俺だよ」って(笑)。続いて「俺も本当は漫画家になりたいんだよ。だからお前の気持ちは分かる。だからもう明日から、お前は後輩じゃないから」って。一瞬何言われてるのか分からなかった(笑)。
福井 無事脱会、いや退部したわけですね(笑)。しかし入学早々、暗黒のキャンパスライフ…私も江古田の街で、日大レスリング部や柔道部の方々と知り合いましたが、入部はしていないので今でもよいお付き合いを(笑)。
根本 日芸にいた2年間は音楽仲間もたくさん増えて楽しかったけど、とにかく最初のあの4ヶ月は、人生で一番辛い地獄のような日々でした。

本学キャンパスのリストプラザに設置された「フランツ・リスト像」の前で
福井 その後バンドは、ポプコン優秀曲賞受賞などを経て、1981年にスターダスト☆レビューとしてデビュー。バンド名(ジャズのスタンダードナンバー『スターダスト』と、多様な音楽性をレビュー形式で披露したい思いに由来)には、幼心にインパクトを受けた記憶があります。でも、要さんの発案ではなかったんですよね?
根本 当時からプロになっても売れないと思ってたし、カッコいい名前だと実物を見た時に落胆するといけないから、むしろふざけた適当な名前の方がいいなと(笑)。
福井 とはいっても、『アレレのレ(アマチュア時代のバンド名)』のままじゃ、さすがにね(笑)。
根本 命名会議で三谷(泰弘氏:初代キーボーディスト)が発した「スターダストレビュー」っていうワードに、他のスタッフたちがワっとノッてきた。一方僕はもう『アレレのレ』を却下された時点で、「まあ皆さんが決めて下さるんだったら、何でもいいです」って。
福井 自暴自棄じゃないですか(笑)。でも不思議なもので、投げやりに受け入れたその名前が、後にバンドの音楽スタイルにピッタリはまって、最近さらに一体化してきている気がします。見上げれば輝きを奏でる満天の星、誰もが心に響く多幸感溢れるライブを見せてくれるバンドですから。
根本 僕もそれは感じます。ライブを重ねるたび、珍しいこの名前のように、僕らが唯一無二のバンドなんだなっていうのを。そこは三谷にホントに感謝しています(笑)。
福井 まさにレビューショーといえるライブは、初めて見る人でも楽しめるエンタテイメント性の高さです。DJ赤坂泰彦さんによる「初めてライブに行くならスタ☆レビに行け!」は、けだし名言。とにかくライブにいけば、間違いなくスタ☆レビの虜になってしまいます。
「根本要とは、現代のフランツ・リストである。違うのは身長だけ(笑)」(福井)
福井 AOR や R&B といった洋楽テイストを昇華したスタ☆レビの音楽性は、圧倒的な幅広さを誇っています。ポップス、ロックだけではなく、ジャズやブギウギ、ファンク、それに珠玉のバラードの数々。さらにメンバー全員による優れたコーラスワークも魅力ですが、その万能ぶりがかえって、私のスタ☆レビ普及活動における“一言での魅力説明”に困る理由となってます(笑)。玉手箱的というか総合格闘技的というか。
根本 学長はご存知でしょうが、スタ☆レビは例えば100公演周るとしたら、70曲ぐらいの中から毎日入れ替えで選曲します。だから毎回違う雰囲気になる。それがとても新鮮なんです。

福井 さらに要さんは、ボーカリスト、ギタリストだけでなく、作曲家、作詞家、MC、ラジオパーソナリティー、副音声家(笑)(ライブ映像副音声でも爆笑のトークを繰り広げる)とマルチな顔を持たれています。以前はライブでバック宙まで(笑)。突然ですが、「ラ・カンパネラ」などで知られるリストはご存知ですよね?
根本 もちろん知ってます。あ、お名前くらいですが(笑)。
福井 リストはクラシック音楽史上、最も多様なスタイルによる1400もの曲を書いた19世紀の作曲家です。一方で、ヨーロッパ全土を席巻した超絶技巧を誇る大ピアニストでした。その他、指揮者、教育者、さらに晩年は宗教家としての顔を持ち、音楽的にも人間的にも多面性があるのが魅力なんです。ここで、私の今日一つ目の名言を発したいと思いますが、よろしいでしょうか?(笑)。
根本 何でしょうか?
福井 「根本要とは、現代のフランツ・リストである」
根本 恐れ多いな(笑)。それはあまりにも違いすぎるんじゃないですか。
福井 違うのは身長だけ(笑)。リストは185㎝あったらしいです。あと、とてもオープンな性格で、交流関係がものすごく広かったんですよ。大作曲家って気難しそうな人が多いじゃないですか、実際誰にも会ったことないですけど(笑)。要さんのように、多くのビッグアーティストをライブのゲストで同時に呼べる方は、滅多にいない。実力とお人柄によるものですよね。
歌はト書きのように
福井 多芸多才の要さんですが、まずは声楽専攻学生のために、ボーカリストとしてのお話を。
根本 よく「何を考えて歌われるんですか?」って訊かれるけど、僕はひたすら間違えないようにだけを考えてます。歌詞もそうだけど、それ以上に音程だったり、リズムだったり。
福井 「根本要の歌は“ト書き(脚本における俳優のセリフ以外の動作や心情、場面設定を伝える文章)”のように聴こえる」っていう話ですね。
根本 音楽自体、聴き手が感情移入できる賜物だから、自分が歌の中に入るのはトゥーマッチですね。主人公はあくまで小説なら読んでる人、音楽なら聴いてる人であって、歌ってる自分ではない。だから“ト書きのよう”とは言い得て妙なんだけど、誰に言われたかは忘れました(笑)。
福井 いい話なのに、忘れたんですか(笑)。歌い手が感情を煽るのではなく、あくまで聴く人の中に感情を広げていくわけですね。
根本 母が亡くなった直後、ライブで『木蘭の涙(亡くなった人を思う歌詞のスタ☆レビ代表曲)』をちゃんと歌えるかなと思ったけど、実際は泣かなかったんです。どんなに悲しくても、真剣に歌おうと思ったら、簡単には涙は出てこない。確かに、この間のKANちゃんの追悼コンサートは感極まった部分はありました。でも、それはあまりにも…歌の中にアイツがいたからで、『木蘭の涙』は少なくとも僕は詞も曲も書いてないから、お袋はその中にはいなかったのでしょう。
福井 作曲は柿沼さん(清史氏:ベーシスト)ですもんね。「印税やカラオケ著作権入ってくるから、柿沼の車は“木蘭号”だ」とか言ってましたけど(笑)。『木蘭の涙』は、名曲ゆえ20人位のアーティストにカバーされています。
根本 その度に「俺の歌じゃダメか?俺で我慢してくれよ」って(笑)。「あなたより上手く歌ってますよ」っていう挑戦状を毎回受けてる気がするから、僕は聴かない(笑)。でも、死ぬまで完成しない曲だと思ってます。余談ですが、歌詞を間違えないようにといえば、“今日調子が良いな”とか“次の歌詞は?”とか余計なこと考えると歌詞が出てこない時あるから、ステージはほんと魔物ですね。

「STARDUST REVUE LIVE TOUR 暮れの元気なご挨拶〜お歳暮付き〜」(2008年)
福井 そんな時は、要さん命名の「歌詞フェイク」で凌ぐんですよね(笑)(フェイクとは、メロディーの原型を残しつつ部分的に音程やリズムに変化をつけ表現を加えることであり、もちろん歌詞には使わない)。私もステージでは“心は燃やすけど、頭は冷静に”と心掛けています。ところで、あるYouTuberが、要さんは、鼻腔共鳴と咽頭共鳴と口腔共鳴、そのバランスがとにかくすごいって言ってました。
根本 言葉が一つも、僕には分かんない(笑)。
福井 それぞれ声を通りやすく、太く、煌びやかにするテクニックで。それらのバランスの良さが響きに立体感を出しているという…私も声楽家じゃないので、ボロが出ないうちにやめときます(笑)。以前、あの歌唱力抜群のASKAさんが、「業界で自分より高い声が出るヤツはいないと思ってたけど、ここにいた。それが根本要」って。要さんは4オクターヴ出るんですよね?
根本 まぁいつでも出せるわけじゃないけど、ギターの全音域は網羅してるかな。
福井 加えてASKAさんは、「要ほどミックスボイス(地声と裏声の中間に位置する第三の声。高音歌唱には必須のテクニック)が出来てる人はいない。要の声は無限だ」って絶賛されてました。
根本 ずっと練習してるのはウィッスルボイス(人間の声帯から出る最も高い音域。口笛のような鋭く澄んだ音色)ね。ミニー・リパートン(70年代、ポピュラー史に残る名曲"Lovin' You"等で一世を風靡)で初めて聴いて、当時は僕らとは喉の作りが違うから出せるんだと思ってたんですが、後にマライア・キャリーとかがやり出して、改めて60年代のソウルを聴いたら(出せる人が)いっぱいいた。それで自分でもトライし、最近少し使えるようになりました。
福井 声帯を微妙に振動させるんですかね?
根本 未だに出る時、出ない時があって、やってみないとわからないって感じです。
福井 要さんだけではなく、バンドメンバー各々が楽器を弾きながらコーラスワークを当たり前にやるのも、スタ☆レビの凄さです。
根本 古くはビートルズ、ビーチ・ボーイズが好きで、僕は本当にコーラスに魅せられてしまいました。一人じゃ絶対できないことだからね。
福井 単にメロディーを補完するハモリではなく、全員で違う音を歌ってコードで進んでいく。特にライブの「ア・カペラ&アコースティック編」は極上の仕上がりで、原曲に新たな色彩感を与えている印象です。
根本 別々の人間の声を重ねて作るハーモニー、それが心地よく聴こえるまでは本当に時間がかかるんですよね。僕らも40年歌って、やっとこう、自分の意図するハーモニーに近づいてきたなという実感を、今噛みしめています。
福井 音楽において感情は、メロディー以上にハーモニーによって語られると思います。そして、ハーモニーのみならず、メンバーやゲストの個性がぶつかり合う“ケミストリー”を毎回堪能していますよ。

ケマル・ゲキチ×福井直昭ピアノデュオリサイタル・2023年6月30日 東京オペラシティコンサートホール
小田和正さんとの出会い
根本 元々僕はギタリストだったけど、必要に迫られて歌うようになり、幸い分析魔だったので、どうしたらうまく聴こえるか、カラオケで歌う人から学びました(笑)。極意としては、下手な人も聴く(笑)。なぜ下手に聴こえるか、ダメなところを参考に直していく。
福井 素人を反面教師にして(笑)。
根本 プロで言えば、小田和正さんとの出会いは、僕の人生の大きな節目となりました。
福井 「二代目を襲名したい」って、ご本人に仰ったって(笑)。
根本 もう20年以上のお付き合いですが、今でも「お前はリハーサルはうまいなぁ」と言われます(笑)。でも普通は落ち込むところを、僕は「褒めてもらえた」と嬉しくなるんですよね(笑)。
福井 私も学生に「リハーサルは本番のように、本番はリハーサルのように」と話してます。
根本 うん、そうですね。では、リハーサルみたいにうまく本番で歌うにはどうしたらいいのか? 答えは簡単。肩の力を抜いて、全力で、適当に楽しむってこと。
福井 「小田さんは鼻歌でもピッチが揺るぎない(笑)」って。
根本 そう。僕が聴いてきた音楽って雰囲気重視で、音程はフラットしたまま歌ってるものが多く、それを魅力的とさえ思ってたんですね。ところが、小田さんの声がバンドの中ですごく響いた時、「なんだろう?あ、そっか、こういうピッチで歌うと綺麗に共鳴するんだ」って。それで初めて僕は“音程をしっかり取ろう”という気になりましたね。

スタ☆レビ40周年≪東西あわせて108曲 煩悩ライブ≫(2022年6月4日:さいたまスーパーアリーナ & 6月11日:大阪城ホール)
福井 要さんの昔の歌唱を聴いても、私には完璧な音程に聴こえるので、ハイレベル過ぎる話です。そういや昔、私が大1くらいの時、バッティングセンターで隣のボックスみたら、小田さんが打ってたんですよ!それが私と小田さんの唯一の出会い(笑)。
根本 アハハ!小田さんは野球少年だからね。上手でした?
福井 うーん…『言葉にできない』かな(笑)。
根本 うまい!(注:『言葉にできない』は小田和正さんの代表曲)
福井 野球と言えば、先日ある大物アーティストの方がプロ野球の始球式で歌って。で、その方はとても音程がいい印象がありましたが、その時はピッチングも大暴投の上、球場だからか音程も怪しくて。つまり“投球のピッチも、音程のピッチも両方ヤバかった(笑)”。
根本 ガハハ!その話は相当練れてるな(笑)。
福井 要さんと言えば ロングトーンがお得意ですが、何かコツは?
根本 いかに細く長く、肺活量を使わないかですかね。あと、聴衆の可聴範囲で、高い音と低い音を同じくらいの音量でマイクに入れるとまとまりが出る、ということに最近気づきました(笑)。ロングトーンのコツは、つまり省エネ投法。細く長く、蜘蛛の糸のように。つまりスタ☆レビと一緒(笑)。
福井 流れで野球用語に絡めてからの、得意の自虐ネタ(笑)。

コロナ禍で行われた 40周年ライブツアー「年中模索」~しばらくは、コール&ノーレスポンスで~
つまりスタ☆レビと一緒(笑)
日本一練習しているバンドという自負、未だに実感する成長
福井 続きまして楽器専攻学生のために、ギタリストとしてのお話を。
根本 僕は時間さえあれば、5分でも10分でも、移動のツアーバスの中やホテルなど、どこでもギターを弾いています。でも、それは僕にとって別に練習なんかじゃなく、楽しみごとなんです。
福井 お風呂入る時もくっついてるから、要さんからギターを外すのには4桁の暗証番号が要るという(笑)。
根本 子供のおしゃぶりみたいなものですね。でも、ミュージシャンは“これで完成”という天辺がないから頑張れますよね。もっと上手くなりたいんなら、日々練習もするでしょ。僕は、練習は絶対に嘘をつかないと思っています。確かにいきなり結果には出ないかもしれない。けど、それがある時“おっ!”と繋がる瞬間があるんです。そういう一瞬を楽しみにしているから、モチベーションが保てるんです。

福井 「ひとは唯一の友としての自分と、唯一の敵としての自分を持つ」という格言がありますが、音大生の日々も“もう練習は止めよう”という、自分の甘い気持ちとの戦いです。でも“あと30分でよいから頑張ってみよう!”と毎日思う。その積み重ねが、自身の潜在能力を開花させる大きな原動力となると思います。
根本 プロであるなら、自分たちが作った楽曲を真っ当に演奏できる演奏力は、いつも持っていなきゃいけない。でも、僕らは正直あまり上手いわけじゃなかったから、今でも練習して、それをなんとかクリアしようとしている。そして、リハも含めた本番でうまくなっていく。スターダスト☆レビューは、日本一練習しているバンドだっていう自負があります。と同時にライブ回数も多いから、失敗も多く経験している。でも、トラブルを経験して、そして限界を決めないでチャレンジしていくから、成長していくんです。45年近くやってるけど、未だ発展している実感があります。
福井 失敗は未来への投資。失敗した悔しさを味わうことこそ、結果的に次のステップへ繋がるだけでなく、人生をより豊かなものにしますよね。きっと読者は、要さん程のキャリアの持ち主が、毎週ライブをやりながら、未だに練習し続けることに対してリスペクトすると同時に、練習するのは苦ではないということを羨ましいと思うでしょう。
根本 こんな楽なことを職業にして良いのかって、いつも思ってます。よくインタビューとかで「ミュージシャンは大変ですね」っていう人いるけど、そういう質問が世のミュージシャンをダメにする(笑)。頼まれてミュージシャンになった奴なんていないのに、急に周りが「大変ですね」とかいうから、「そう、大変なんだよ」なんて言いやがる(笑)。好きでやってるくせにね。同じように、音楽が嫌いで音大に来た人なんていないですよね。
福井 音大生も、そして先生たちも、初心を忘れるなという事ですよね。日常生活でもキャリアにおいても、成長と謙虚さのバランスを保つことが必要だと思います。

終演後のスタ☆レビのメンバーと福井理事長・学長
45周年ツアー2025~27「星屑冒険王」野外編(2025年7月13日:日比谷公園大音楽堂)

根本 要 (Kaname NEMOTO)
1957年埼玉県出身。1981年、スターダスト☆レビューのメンバーとしてデビューし、これまでにリリースしたアルバムは49枚。音域の広い伸びやかな声で、バラードからアップテンポな曲まで、どんな曲も自分色に染めてしまう稀代のヴォーカリスト。また巧みな話術で、ラジオのパーソナリティーや番組出演も多数。エンタテイメントに徹したステージで観客を魅了する日本屈指のライブバンドは、45年目を迎えた現在も100公演を超える全国ツアーを展開中で、ライブ総数は2700回を超える。2001年開催の「つま恋100曲ライブ」において101曲演奏した事が「24時間で最も多く演奏したバンド」としてギネスワールドレコーズに認定される。

福井 直昭(Naoaki FUKUI)
1970年東京都出身。慶應義塾大学卒業、武蔵野音楽大学大学院修了、ミュンヘン音楽大学留学。ピアニストとして国内外で20を超えるオーケストラと協演し、クロイツァー賞、ブルガリア国際コンクール「Music and Earth」全部門グランプリ、ハンガリージュール市記念シルバーメダル、下總皖一音楽賞等受賞。現在、武蔵野音楽大学理事長・学長の他、日本私立大学協会常務理事、全日本音楽教育研究会会長等を務め、学内のみならず多くの機関において重要な役割を果たす。また、教授として優秀なピアニストを多数世に輩出するほか、マスメディアへの登場も多く、音楽文化を教育・研鑽する大学の長として、音楽の枠に留まらない発信を常にし続けている。