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武蔵野音楽学園

スピネット

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F.ヴォルテリン作 イタリア 奥行き135cm

バロック時代、ヴェルサイユ宮殿における華麗な建築様式に象徴される、豪華絢爛な王宮文化が花開いた西欧では、音楽の分野においても、人間の精神を開放し情念を再現する、劇的で表現力豊かな楽曲が新たに誕生した。このバロック音楽では、作品の水平的統一性を確保するとともに、垂直的に和音を補完する手段として通奏低音の技法が確立され、その担い手として、チェンバロがあらゆるジャンルの音楽に不可欠な役割を演じた。さらにチェンバロには、それを所有する王侯貴族の品位を示す、高級調度品としての意匠も求められた。多くのチェンバロには華やかな絵画や装飾が施され、その形態も様々なものが存在する。その中で、奏者に対して弦が斜めに張られた形のチェンバロを「スピネット」と呼ぶ。

写真の楽器はイタリアのヴォルテリンが製作したスピネットで、以下の様なイタリア様式によるチェンバロの特徴を併せ持っている。イタリアでは、チェンバロ本体が独立した外側のケース(アウター)に納められたものが数多く製作され、しばしばそのアウターには補強と装飾を兼ねてモールディングと呼ばれる縁取りが施された。また、イタリアのチェンバロの装飾には、ルネサンスをテーマにしたものが多い。ルネサンスは中世の閉鎖的な教会主義からの脱却を目指し、人々の精神的開放を実現させたが、その精神的基盤は古代ギリシアや古代ローマの人々の価値観であった。したがって、多くのイタリアのチェンバロにはギリシア神話や古代ローマ美術の絵画や彫刻が施されている。

この楽器の前面に描かれたゼウスやアポロンなどのギリシア神話の一場面、鍵盤両側に施された立体的な彫刻、そして3本の脚の洗練されたデザインなどからは、優美なイタリア式チェンバロとしての品格が窺える。(武蔵野音楽大学楽器博物館所蔵)