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武蔵野音楽学園

魚 板

魚版
魚 板
全長 89cm  日本

縁起物として古くから日本人に貴ばれてきた鯛をまるごと楽器にしてしまうという、新春にふさわしい「めでたい」風貌のこの楽器、名を魚板という。

魚板は禅との関わりが深く、主に禅宗の寺院などで用いられる。大型のものでは数メートルにも及び、寺院の堂内に吊るされた姿は圧巻で一際存在感を放つ。小型のものでは50センチメートルぐらいからあり、主に茶事で用いられることが多い。

修行僧たちは寺院で毎日規則正しく清規(しんぎ)の定めに従って生活を行っているが、これらの合図には言葉を用いず、すべて鳴らしものの種類によって区別して知らせるのである。魚板もこのような鳴らしものの一種で、食事を知らせる合図などで打ち鳴らされる。魚形という個性的な形体には意味があり、魚はまぶたがなく昼夜を問わず目をつぶらないことから、修行僧に対して居眠りを戒めるという意味合いが含まれているようである。

京都黄檗山(おうばくさん)萬福寺に代表されるように、通常は鯉や龍などをモチーフとしている例が多く見られ、写真のように鯛をモチーフとした方が少ないようである。鯉や龍が口に珠をくわえていたり、頭部は珠取り龍で尾部は魚形という変型例もある。珠にもまた禅の考えに基づいて三つの煩悩(むさぼり、怒り、愚痴)を表す意味があり、これらを吐き出そうとしているのである。

中国では、鯉は古くから信仰や食習慣と結びついて最も珍重された魚であった。日本でも中国文化の影響を受けて古代から中世にかけて鯉が珍重された時期もあったが、いつの間にか魚の王は鯛となった。鯛の赤が吉祥を表す色として慶祝の象徴になり、端整な姿が日本人の嗜好に合致して鯛信仰を生んだのだろう。そう考えると、所蔵する写真の楽器は、禅とともに中国から伝来した可能性の高い魚板が、その後日本的に転化したタイプと考えられないだろうか。

なお、お寺の楽器として私たちに親しみのある木魚は、実はこの魚板から派生したものとも言われている。
(武蔵野音楽大学楽器博物館所蔵)